現代法話研究会

獅子吼の会

真宗大谷派(東本願寺)大阪教区の有志結成した会です。真宗寺院を聞法の道場へと回復することを願い、法話を中心にすえ、聞法・学習を行っております。

獅子吼のコラム 2022/12/01

『ナンパもご縁となれば』

「平野さんがナンパしたおかげで不登校の子が学校に行きましたよ!」って、もう……また言ってるよ。けど、そうかぁ……あれがこんなことにもなるんだね……。


 某日、陽光の下を桜が舞い散り、その花びらが疎水の水面を流れていく様を時々スマホで写しながら哲学の道を歩きました。目的地の側まで来て時計を見るともうすぐ二時。午前中のお参りを終えてすぐに寺を出たのでお腹はペコペコです。そこで事前に調べておいた近くの蕎麦屋さんに入ることにしました。


 お昼時はとうに過ぎていたので六つしかないカウンター席には私とすぐ後に入ってきた女性客の二人だけ。その二人に注文を出し終えて暇になったのであろうお店の大将は、昼間から日本酒をチビチビやりながら蕎麦がきをいただいている私はスルーして、女性客に「どちらからですか」と声をかけました。静かな店内なので私の耳にも自然とあちらの会話が入ってきます。どうやら今日はお子さんの大学の入学式だったようで、せっかくこの辺に来たので足を伸ばしてここまで散策に来られたようです。へぇ……とついそちらへ顔を向けてしまうと、思いがけなく目が合ってしまいました。「おめでとうございます」と私も一言。それがきっかけで暫し言葉を交わしましたが、私は目指すところがあるので冷酒の瓶が空になり次第席を立ちました。ただその際、宣伝にと思って一言そえたのです。「右に歩いて行って橋二つのところにあるギャラリーで友だちの陶芸家が初めての個展をやっているので、もしお時間があれば見てあげてください」と。


 それから三十分後くらいでしょうか、ギャラリーで友人からコーヒーを振る舞われているところへ、なんと先ほどの女性が訪ねてくださったのです。その上、友人の作品を気に入ってくださって、今日の入学式の記念にと展示していたお皿を一枚購入してくださいました。その時です。最初の問題発言が飛び出したのは。「いやぁ、平野さんがナンパしたお陰で一枚売れましたよ~」。いやいや、ナンパじゃないからね。

お買い求めいただいた白緑色のお皿は、テーブルの真ん中でお料理を盛るの

によいくらいの大きさで少々重くもあるので、その方は郵送してもらうことにされました。その送り状を書いておられる横で私がまた、「奈良の田舎ですからちょっと遠いですけど、彼の工房も面白いですよ。陶芸体験もできますよ」と、口下手な友人の代わりに宣伝してあげたのです。優しいでしょう、私(笑)。

 そうしましたら後日、その方が工房に遊びに来てくださったのです。直ぐさま友人からLINEで報告が届きました。「平野さんがナンパした方が来てくださいましたよ!」だから、ナンパじゃないってば。

 そんなこんなで、私はその方とはあの日以来それっきりなのですけど、友人とはすっかり親しくなったようです。

 一月後、友人は地域おこしのNPOの活動などもやっていて、そこへまた……あの方は学校の先生だったらしく、彼女が勤める学校の不登校の児童三人を連れてこられて、一緒に畑にナスを植えるボランティアに参加されたのだそうです。それでまた当然のごとく「平野さんがナンパした云々」の通知です。

それから一週間後にまた通知があって、今度はなんなの?とスマホを覗くと、なんと「さっき連絡があって、あのときの一人が学校に行き出したらしいです」とありました。そして冒頭のあの言葉です。「平野さんがナンパしたおかげで不登校の子が学校に行きましたよ!」

仏教はこの世界を「重重無尽の縁起」ととらえます。この世界は、重なり合い、どこまでも尽きることのない縁の連鎖であるという意味です。私はその子を知りません。その子も私を知りません。でも知らない者同士の人生が実はつながっているのです。友人の言うような私のお陰では決してないのですが、その子にとって全く関係のない場所で全く関係なくなされ会話がその子の人生のご縁にはなったのは事実です。人生って本当に不思議ですね。

平野圭晋

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